「プロジェクトマネジメント」と「プロジェクトファシリテーション」

プロジェクトファシリテーションと聞くと、プロジェクトマネジメントと何が違うのか?この問いが浮かんできます。


私の今までの経験の中でも素晴らしいプロジェクトマネージャは、素晴らしいファシリテーション能力を兼ね備えていました。
一方、イマイチなマネージャは、結果のみに固執し、私たちは結果を生み出すための駒(モノ)として見られていた気がします。


PMBOKに限らず多くのプロジェクトマネジメントの体系や手法には、コミュニケーションの活性化や人的ソースの管理、動機付けなど多くの人にかかわる要素が盛り込まれており重要視されています。
また、職場などにおける環境面を整備することも重要な点となっています。


プロジェクトファシリテータは、特にこのプロジェクトに関わるメンバーが、人間らしく、かつ最大限に成果をあげるために支援を行うことを目的として活動します。
その結果、プロジェクトから生み出される成果はより良いものになると考えます。
この考え方は、結果に着目し「問題」に対処的にかかわるよりも、プロセスに着目し「問題」を生み出さない、起こったとしてもすぐさま摘み取る点に重きをおいています。
そのためにプロジェクトファシリテータはより積極的に、物理的な環境面を整えたり、メンタル面により良い働きかけを行うようにします。


プロジェクトファシリテータは、主に人と環境について注意を向けその様子を感じて行動を行うことになります。
環境と生き物の関係は認知科学者のジェームス・ギブソンが唱えるアフォーダンスの考え方もとても参考になります。
人や環境は常に変化をし続けているので、プロジェクトファシリテータはPC上の管理資料よりも、メンバーの様子や「場(Ba)」の様子を感じ取る必要があります。
多くの場合、今まで以上に瞬間瞬間の様子を捉えるために、自身の多くの時間と能力をそこに向け続ける必要があります。
現実派、自分の頭の中で起こっているのではなく現実の世界にあるからです。
これらは、昔からトヨタやホンダなど多くの創業者が繰り返し伝えようとしている、現地現物などのことです。(先日のAgile Japan 2010の講演でも野中郁次郎先生が語っておられました。)


非常に端的な表現をあえてするとすれば、プロジェクトに直接的な働きかけを行うのが、プロジェクトマネージャの役割で、間接的な働きかけを行うのが、プロジェクトファシリテータの役割と言うことができるでしょう。
同一人物が、両方を担うことも可能ですし、それぞれの役割を分担することも出来るでしょう。
メンバ全員がプロジェクトファシリテータとして振舞うことができれば、それは、究極的なプロジェクトチームの姿かもしれません。

プロジェクトマネージメントとプロジェクトファシリテーションは、どちらが良いとか悪いとか上下や内包の関係ではなく、相互に補完し合う「相補」の関係性であるといえます。